生贄探し 暴走する脳 (講談社+α新書)
- 講談社 (2021年4月22日発売)
f.2023/2/25
p.2023/2/1 -
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「なぜ、誰かが得すると自分は損した気になるの?」
Go Toトラベルも、社会全体の経済をよくするためが、「あの人だけ、いい思いをするなんて許せない!」とモヤっとした人は少なくありませんでした。そんな負の感情が連鎖しやすい傾向こそ、日本人の脳の特徴だったのです。
一方、「日本人は親切だ」「日本人は礼儀正しい」「日本人は真面目だ」「日本人は協調性がある」──こうした日本人への褒め言葉をよく耳にします。でも実は、日本人はよその国の人よりいじわる行動をすると判明。自分が損をしてでも相手に得させない行為をする日本人。
パンデミックでは、コロナ禍で奮闘する医療者までも生贄探しの対象になりました。むき出しになった正義中毒に誰もが「他人の目が怖くて」自粛。巣ごもりで毒親に悩むケースも目立ちました。自他ともに生きにくさを増すこの時代、脳科学者の中野信子さんと、時代も国も越えた体験を描く漫画家・随筆家のヤマザキマリさんが鋭く分析。パンデミックの経験を無駄にせず、心豊かに生きる方法が得られます。〈目次より〉
第1章 なぜ人は他人の目が怖いのか 中野信子
「魔女狩り」に見る人間心理の闇/幸せそうな人を見ると、なぜモヤッとするの?脳は、誰かと比べないと幸せを感じられない
なぜ、「他人の不幸」は蜜の味なのか/世界でもいじわる行動が突出している日本人
あなたが生贄にされないために 他
第2章 対談 「あなたのため」という正義──皇帝ネロとその毒親
人はいともたやすく正義中毒にはまる
なぜ読者が、皇帝ネロに感情移入したのか
母親や重臣殺害の深層心理
自己評価の低さがおデブの引き金に
間違った褒め方がプチネロを作る 他
第3章 対談 日本人の生贄探し──どんな人が標的になるのか
プチネロたちの脳内
「群れ」に生じる凶暴な安心感
なぜ、日本では陰湿な炎上が起きるのか
「群れに害をなす」というレッテル
ファッション化する「正義」
フェラーリで上がる男性ホルモンの値
キリスト教と仏教の救済の違い
攻撃する側の脳内を満たす快感
「得していそうな人」が生贄になる 他
第4章 対談 生の美意識の力──正義中毒から離れて自由になる
境目の人々に見えている世界
戦わずして勝つフェデリーコ2世の戦略
エンタメは負のエネルギーを浄化する
日本人を変質させた歴史のキーワード
「違い」を面白がれる生の美意識
自分は自分が大事、相手も自分が大事 他
第5章 想像してみてほしい ヤマザキマリ
「出る杭を打つ」日本を恋しがるイタリア人の夫
思い知らされた「世間体」という日本の戒律
想像力の欠如がヒトを危険生物化する
人からの評価で自分の存在を自覚する
人を脅かし群れさせる「孤独」の正体
自他ともに失敗が許せない時代
敵を味方に変えたフェデリーコ2世と空海の力
本当の「正義」について考えてみる
おわりに ヤマザキマリ
著者について
中野 信子
なかの・のぶこ─1975年、東京都生まれ。脳科学者、医学博士、認知科学者。東京大学工学部応用化学科卒業。同大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。フランス国立研究所ニューロスピンに勤務後、帰国。脳や心理学をテーマに、人間社会に生じる事象を科学の視点をとおして明快に解説し、多くの支持を得ている。現在、東日本国際大学特任教授、京都芸術大学客員教授。著書に『サイコパス』(文春新書)、『空気を読む脳』(講談社+α新書)など。ヤマザキ マリ
やまざき・まり─1967年、東京都生まれ。漫画家・随筆家。東京造形大学客員教授。1984年にイタリアに渡り、国立フィレンツェ・アカデミア美術学院で美術史・油絵を専攻。2010年『テルマエ・ロマエ』で第3回マンガ大賞受賞、第14回手塚治虫文化賞短編賞受賞。平成27年度芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。2017年イタリア共和国星勲章コメンダトーレ受章。著書に『プリニウス 』(とり・みき氏との共著、新潮社)、『たちどまって考える』(中公新書ラクレ)など。 -