伊藤比呂美さんの青空文庫の読み方 

この頃読んでいたのは鷗外です。前から好きでしたが、先日ベルリンの鷗外記念館に行ったせいでもっと読みたくなって、青空文庫を漁りました。鷗外、それから太宰も、実は、ふつうの本より青空文庫で読んだ方が、五臓六腑に沁みわたるような気がしております。つまり、ネットの画面そのままでは読みにくいので、まずHMTLで表示して、全文をハイライトして、それをコピーして、自分のコンピュータのWordに移して、縦書きに直して、好きなフォントに直したり旧かなを新かなにあるいはふりがなを除去したりして、自分の読みやすいように直していくうちに、全文を、まんべんなく、すみからすみまで、目で読むというより手で読んでいく。そうしますと、鷗外や太宰の声のあとを手でしっかりなぞりながら、耳を澄ませていくことができるのです。
 
伊藤比呂美「お天道様と米の飯と岩波文庫岩波文庫 読書のすすめ第13集 p.19