2022/1/3 読了 佐藤正午「夏の情婦」 (小学館文庫)

2022/1/3 読了 佐藤正午「夏の情婦」 (小学館文庫) 

 

f.2022/1/3
p.2021/4/12

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みずみずしい感性が光る永遠の恋愛小説集

「ひとつ例にとると、『傘を探す』という作品。僕はこの、失われた雨傘を探して夜の街を、人から人へとめぐり歩くストーリーをいまでも面白いと思います。

もし若い佐藤正午がこれを書いていなければ、いま僕の手で新たに挑戦してみたいくらいです。

短編集『夏の情婦』を読み返して、この五編がいずれも、書くべきときに書かれた小説である、と三十年後のいま思える、それが僕の率直な感想です」
(本書「三十年後のあとがき」より)

 

「鳩の撃退法」、「月の満ち欠け」と、次々に小説読みたちを唸らせる傑作を発表し続けている著者が、「永遠の1/2」でのデビュー直後に執筆した恋愛小説五編を収録。

「傘を探す」の他には、小説賞を受賞した三十一歳のぼくがネクタイを介して大学生の自分と年上女性との恋愛を追憶する「二十歳」、男と女のフラジャイルな関係を気だるい夏の残暑のなかに再現してみせた「夏の情婦」など。

いずれも恋愛をテーマにしているものの、その語り口は変幻自在で、すでに「小説巧者」の片鱗をうかがわせる作品ばかりだ。

解説は著者の長年の熱烈な読者である中江有里さん(女優・作家)が執筆している。

 

【編集担当からのおすすめ情報】

佐藤正午氏ほど同業者や編集者に隠れファンが多い作家を知りません。
それは彼がずっと小説に対して技巧的な挑戦を続けてきたからに他なりません。
そんな佐藤正午氏と小説に関して話すときいつも話題に上っていたのがこの小説集です。

寡作な作家であるため、近年あまり短編小説を発表する機会は少なくなりましたが、実は小説に対するテクニカルな試みは、この初期短編の頃から続けられています。
そして、この小説集の再刊行は、佐藤正午氏のたっての希望でもありました。
後世に残る永遠のスタンダードともいうべきこの一冊、ぜひご一読ください。

 

【ご注意】※集英社より一九九三年三月に刊行された文庫をもとにして、新たに著者が書き下ろした「三十年後のあとがき」を加えて、再文庫化したものです。

内容(「BOOK」データベースより)

第一五七回直木賞を『月の満ち欠け』で受賞した著者が、デビュー直後、瑞々しい感性で描いた永遠の恋愛小説集。ネクタイから年上女性との恋愛を追憶する『二十歳』、男と女の脆い関係を過ぎゆく季節の中に再現した『夏の情婦』、高校生の結ばれぬ恋を甘く苦く描く『片恋』、夜の街を彷徨いながら人間関係を映していく『傘を探す』、放蕩のなかでめぐり遭った女性との顛末『恋人』、小説巧者と呼ばれる才能がすでに光り輝く五編を収録。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

佐藤/正午
1955年長崎県生まれ。1983年『永遠の1/2』で第七回すばる文学賞を受賞。2015年『鳩の撃退法』で第六回山田風太郎賞を受賞。2017年『月の満ち欠け』で第一五七回直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)