2022/2/15 読了 佐藤正午「岩波文庫的 月の満ち欠け 」

2022/2/15  読了 佐藤正午岩波文庫的 月の満ち欠け 」

 

f.2022/2/10
p.2019/10/9

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あたしは,月のように死んで,生まれ変わる――この七歳の娘が,いまは亡き我が子? いまは亡き妻? いまは亡き恋人? そうでないなら,はたしてこの子は何者なのか? 三人の男と一人の女の,三十余年におよぶ人生,その過ぎし日々が交錯し,幾重にも織り込まれてゆく,この数奇なる愛の軌跡.プロフェッショナルの仕事であると選考委員たちを唸らせた第一五七回直木賞受賞作,待望の文庫化.

(特別寄稿:伊坂幸太郎)

 

メディア掲載レビューほか

月の満ち欠け

東京駅のカフェで初老の男が店員に注文を伝えると、先に着席していた小学生の女の子が「どら焼きのセットにすればいいのに」と言い、かつて3人で食べたよねと畳みかける。

再読すると、少女が初対面の男を知悉していることを強調する冒頭シーンの繊細さに驚かされる。その後の約300頁は、男と読者が抱く「違和感」を解きほぐすことにあてられる。手塚治虫火の鳥』や折口信夫死者の書』を思い起こさせる展開だ。

著者は人生の岐路を主題としてきた作家だ。「記憶」をカギとする本作もその系譜にある。「まさか」と思える出来事に現実味を与えるのは、細やかな生活描写だ。感動の場面は無数にあるが、満月の夜に一人でどら焼きを食べたくなる「究極の愛」の物語だと評するにとどめたい。とにかくラストがすごい。

評者:朝山実

(週刊朝日 掲載) --このテキストは、tankobon_hardcover版に関連付けられています。

著者について

佐藤正午(さとう しょうご) 1955年8月25日,長崎県佐世保市生まれ.北海道大学文学部中退.1983年『永遠の1/2』で第7 回すばる文学賞を受賞.2015年『鳩の撃退法』(小学館,2014年)で第6回山田風太郎賞を受賞.そのほかの著作に『ジャンプ』『身の上話』(光文社),『5』(角川書店),『アンダーリポート』(集英社),『小説家の四季』(岩波書店),『小説の読み書き』(岩波新書)など. --このテキストは、tankobon_hardcover版に関連付けられています。

内容(「BOOK」データベースより)

欠けていた月が満ちるとき、喪われた愛が甦る。第157回直木賞受賞。 --このテキストは、tankobon_hardcover版に関連付けられています。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

佐藤/正午
1955年8月25日、長崎県佐世保市生まれ。北海道大学文学部中退。1983年、『永遠の1/2』で第7回すばる文学賞を受賞。2015年『鳩の撃退法』(小学館、2014年)で第6回山田風太郎賞を受賞。2017年、『月の満ち欠け』で第157回直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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